「院内の掲示がごちゃごちゃしていて伝えたい情報が届かない」「患者からの同じ質問が何度も寄せられて困っている」そんな悩みを感じたことはありませんか。

病院やクリニックにとって、院内での情報伝達は診療と同じくらい大切な業務のひとつです。とくに受付や待合室のように患者が過ごす時間が長い空間では、案内や注意事項などをスムーズに伝えることが、安心と満足度の向上に直結します。近年では、紙の掲示物では伝わりづらかった情報も、デジタルディスプレイを活用した映像やスライドでの表示に切り替えることで、視認性や理解度を飛躍的に高める医療機関が増えています。

導入にあたっては、配信システムの操作性や設置場所に合わせたモニターの種類など、考慮すべき点がいくつかありますが、ネットワーク型の活用により複数拠点でも一括で情報更新が可能となり、運用の負担も最小限に抑えることができます。また、診療時間の変更、検査の案内、院内マナーの告知など、患者とのコミュニケーションに必要な情報をリアルタイムで反映できる点は、従来の紙媒体では得られなかった大きな利点です。

情報発信の質を上げたい、スタッフの説明業務を減らしたい、患者の不安を和らげたい。そんな医療現場が次に選んでいるのが、院内におけるデジタルサイネージの活用です。日々の業務に追われるなかで、その一歩が負担を軽減し、現場と来院者の双方にとって有益な変化をもたらすことが注目されています。

デジタルサイネージを導入する病院の特徴

院内の案内や掲示に求められる工夫

病院内では、患者や来訪者に対して必要な情報を迅速かつ正確に伝えるための案内や掲示が欠かせません。しかし、紙ベースの掲示物では情報の更新に時間がかかる、視認性が低い、掲示場所が限られるといった課題が存在していました。

近年では、こうした課題を解決する手段として「デジタルサイネージ」が注目されています。デジタルサイネージは電子ディスプレイを利用して、診療時間やフロアマップ、混雑状況、健康情報などを表示する仕組みです。クラウド型システムと連携することで、複数端末を一括で管理でき、タイムリーな情報提供が可能になります。

従来の掲示方法と比較した際の違いは以下のとおりです。

掲示の目的	紙掲示の課題	デジタルサイネージの改善点
診療時間の案内	印刷・張り替えが必要	遠隔操作で即時更新が可能
院内マップの掲示	視認性が低く迷いやすい	カラー表示・動的切替で見やすさを向上
健康情報の発信	情報量が限られる	動画やスライドで豊富な情報発信が可能
混雑状況の表示	手動更新に限界がある	リアルタイム表示で来院者の不満を軽減
感染症対策の案内	共有物による接触リスクあり	非接触表示で衛生面にも配慮

医療機関がデジタル表示を選ぶ理由

医療機関がデジタルサイネージを積極的に取り入れているのは、単に「見た目が新しいから」という理由だけではありません。そこには運用効率やサービス品質を大きく改善できる具体的なメリットがあります。

たとえば、院内の案内や診療情報の変更に対し、紙での対応では「作成→印刷→掲示」という工程が必要になりますが、デジタルサイネージであれば管理画面から即座に表示内容を変更できます。また、表示内容を時間帯別や曜日別に自動切替する機能も搭載されているため、スタッフの負担も大きく軽減されます。

さらに、診療科ごとの個別表示や、受付番号の呼び出し、検査説明など、部門ごとの情報を的確に配信できるため、業務連携にも役立っています。情報提供の質が高まることで、患者満足度の向上にもつながります。

以下に、医療機関が導入を検討する際に重視するポイントをまとめました。

導入目的	導入前の課題	デジタル表示による改善
情報の即時性	急な変更に掲示が追いつかない	クラウド管理で即座に内容を反映
スタッフ負担	紙の掲示は作業が煩雑	スケジュール管理で自動表示が可能
患者サービス	情報が分かりづらく混乱を招く	視覚的にわかりやすく案内が可能
感染対策	掲示物の接触が気になる	非接触での情報共有が可能
多言語対応	外国人患者への対応が困難	自動切替で多言語表示に対応

また、導入後は単なる情報提供にとどまらず、院内の「広報」としての機能も果たすようになります。予防医療や健診の重要性、院内ルールの説明などを動画で流すことで、患者の理解を深め、病院全体のブランディングにも寄与しています。

こうした流れの中で、院内のデジタル化は単なる設備投資ではなく、医療機関の「信頼性」と「安心感」を高めるための基盤になっていると言えるでしょう。今後の病院運営において、デジタルサイネージはますます重要な役割を担っていくことが期待されています。

病院で使われるデジタルサイネージの仕組み

画面に映す内容の切り替え方法

病院で活用されているデジタルサイネージは、ただ情報を映し出す装置ではありません。患者の利便性向上や院内の業務効率化を実現するため、配信される内容は常に状況に応じて切り替えられています。その切り替え方法にはさまざまな技術と工夫が込められており、医療機関に最適化されたシステムが採用されています。

まず最も基本的な切り替え方法は、タイムスケジュールに沿った自動配信です。診療時間、曜日、担当医の予定に合わせて、あらかじめ設定された番組（表示コンテンツ）が自動的に切り替わる仕組みです。たとえば午前は内科の診療案内、午後は整形外科の案内に切り替えるといった運用が可能です。これにより、スタッフが手動で内容を変更する手間が省け、ミスも減少します。

次に活用されているのが、イベントや緊急時に対応する即時切り替えです。地震速報、インフルエンザの感染拡大、臨時休診といった情報を、クラウド経由で瞬時に全ディスプレイへ表示できる仕組みです。これにより、院内全体に迅速かつ正確に重要な情報を伝えることができます。

以下は、主な切り替え手段とその特長をまとめた表です。

切り替え方法	内容	使用シーン	メリット
スケジュール自動切替	時刻・曜日に合わせて自動更新	診療時間の案内、曜日別担当医表示	手間なく運用できる、ミス防止
手動即時切替	手動操作で任意タイミングに切替	緊急案内、災害時のお知らせ	迅速な情報発信が可能
イベント連動切替	センサーやシステムと連携して自動切替	診察室番号の呼び出し	リアルタイムな表示制御
コンテンツ自動ローテーション	複数の内容を自動で順番に表示	待合室の健康番組や案内映像	患者の注意を引きつける
ユーザー別出し分け	フロアや対象者に応じた表示内容を設定	多言語対応、年齢別対応	きめ細かな案内が可能

このように、デジタルサイネージの画面切り替え機能は、病院が情報提供の精度と効率を高める上で非常に重要な要素です。従来のポスター掲示や口頭案内では伝えきれなかった内容を、タイムリーかつ柔軟に発信できるこの仕組みは、現代の医療現場に欠かせない技術として定着しつつあります。

遠隔からの管理ができる仕組み

病院の運営において、複数のディスプレイを同時に管理する必要がある場面は少なくありません。受付、診察フロア、検査室、待合室などに設置されたそれぞれのデジタルサイネージに、異なる情報を配信するには手間と時間がかかります。そこで導入されているのが、遠隔管理に対応したクラウド型の配信システムです。

この仕組みでは、病院内のPCや専用の管理端末から、全てのディスプレイに表示される内容をリアルタイムで制御できます。設定変更、配信スケジュールの編集、トラブル時の対応などが一元化されており、物理的に各端末へ赴く必要がありません。これにより、運用担当者の負担が大きく軽減されるとともに、情報の整合性も保たれます。

特に大規模病院や医療法人では、複数施設にまたがって同じシステムを導入するケースが増えており、クラウド対応によって一括配信が可能になります。たとえば本部の管理画面から、系列クリニックすべてに「新型感染症対策の注意喚起」を同時に配信することも可能です。

また、こうした遠隔管理の仕組みは、機器の異常を検知して管理者に通知する機能や、自動で再起動・再接続を行う自己復旧機能なども備えており、トラブル時の対応もスムーズです。表示内容のログ管理や配信履歴の確認もできるため、トレーサビリティや内部監査の観点からも安心感があります。

以下に、主な遠隔管理の機能を一覧で整理しました。

機能名	説明	活用メリット
スケジュール配信管理	日時設定で自動配信を設定できる	業務負担を軽減し計画的な表示が可能
一括コンテンツ更新	複数端末に同時に内容を送信	系列施設への情報共有が簡単
エラー通知・監視機能	機器異常を自動で管理者に通知	故障や配信停止を迅速に把握
自己復旧機能	端末が自動で再起動・再接続を試行	トラブル時の影響を最小化
配信ログの保存	表示履歴を記録して確認できる	情報漏洩や誤表示の防止、監査対応にも有効
ユーザー権限設定	管理画面の操作範囲を役職に応じて制御	情報管理体制の強化と誤操作防止

デジタルサイネージと病院の相性

来院者の行動に合わせた情報提供

病院を訪れる患者や付き添いの方々は、受付、診察、会計、検査など、複数のステップを踏みながら院内を移動します。このように動線が多岐にわたる医療施設では、来院者が必要とする情報を、必要な場所で、必要なタイミングに提供する仕組みが不可欠です。その点で、デジタルサイネージは非常に高い親和性を持ち、来院者の行動に合わせた柔軟な情報提供を実現できます。

まず、受付エリアでは、診療科の担当医、当日の診療スケジュール、待ち時間の目安などを表示できます。これにより、来院者は初めての病院であっても安心して受付を済ませることができます。番号表示と組み合わせた呼び出し機能も導入すれば、混雑を分散し、ストレス軽減にもつながります。

次に、待合室では診療までの時間を有効に活用するため、健康情報や予防医療の知識、生活習慣病の対策などを動画やスライドで放映することが可能です。これにより、来院者が医療に関心を持ち、必要な検査や相談につなげることができます。また、医療機関の方針や取り組みを丁寧に紹介することで、病院への信頼度も向上します。

デジタルサイネージは、診療エリアや検査室前にも設置できます。診察や検査の準備に関する注意点、呼び出し順、検査機器の使用方法などを表示することで、スムーズな案内が可能となります。特に高齢者や日本語に不慣れな外国人の方にとっては、視覚的にわかりやすい情報提供は重要なポイントです。

下記は、来院者の行動パターンに応じた設置場所と表示内容を整理した一覧です。

設置場所	主な表示内容	目的	想定利用者
受付エリア	診療案内、担当医情報、受付方法	初診や再診の流れを把握	すべての来院者
待合室	健康情報、病院からのお知らせ	待ち時間の有効活用	患者と付き添い
診察室前	順番案内、注意事項	不安や混乱を防ぐ	呼び出し待ちの患者
検査室付近	検査準備、機器説明	検査前の混乱を軽減	検査を受ける患者
会計・薬局前	支払方法、受付番号の進行	効率的な誘導	診察終了後の来院者

このように、来院者の動線に合わせた表示内容を計画的に配信することで、院内の混乱を防ぎ、安心して医療を受けられる環境を整備できます。さらに、スタッフの案内業務の負担も軽減され、院内全体の運営効率が大幅に向上します。これらの理由から、デジタルサイネージは単なる情報表示ツールにとどまらず、来院者に寄り添う医療サービスの一部として高く評価されているのです。

紙の掲示から切り替えることによる変化

従来、病院では掲示板や張り紙などを用いて患者への情報提供を行ってきました。診療時間、休診案内、院内マップ、感染対策など、多くの情報が紙によって伝えられていましたが、この方法にはいくつかの課題が存在していました。更新のたびに印刷と張替えが必要で手間がかかること、貼り出し場所が限られているため情報が埋もれてしまうこと、そして視認性や言語対応に限界があることです。

デジタルサイネージへの切り替えにより、これらの問題は一気に解消されました。まず、クラウドを活用したコンテンツ管理システムによって、遠隔からの一括操作が可能になり、複数の画面に同時に情報を配信できます。掲示の更新は数クリックで完了し、緊急情報の即時発信も可能です。

また、動的なコンテンツにより、静的な紙掲示では難しかった情報の可視化が可能になりました。動画やアニメーション、音声ガイドを活用することで、患者の注目を集めやすく、視認性の向上にもつながっています。特に小児科や眼科など、説明が難しい分野においては、視覚的な説明が理解を助ける重要な要素となっています。

言語の切り替え機能やピクトグラムの導入により、外国人患者や高齢者にも配慮した掲示が可能です。診療時間の案内を4カ国語で表示したり、マスク着用のお願いをイラストと文字で組み合わせて表示したりすることで、院内全体の対応力が強化されます。

紙からデジタルに切り替えることで得られる具体的なメリットを、以下に整理しました。

比較項目	紙の掲示	デジタルサイネージ
更新作業	印刷・張替えが都度必要	数クリックで即時反映
掲示面積	掲示場所が限られる	同一画面で複数情報を表示可能
視認性	文字や配色に限界	動き・色・音で注目を集めやすい
多言語対応	原則不可（別紙が必要）	画面上で切り替え表示が可能
衛生面	紙を触ることで汚染のリスク	非接触で情報提供が可能
コスト構造	印刷代・掲示時間が都度発生	初期導入後はコスト削減も期待

このように、紙掲示からデジタル表示へと切り替えることで、病院全体の情報提供の質が飛躍的に向上しています。ただ情報を「伝える」のではなく、「伝わる」ように設計されたデジタルサイネージは、現代の医療現場にとって極めて重要な役割を担っています。患者サービスの向上、スタッフの業務軽減、さらには院内ブランディングの一環としても、高い効果が期待されているのです。

医療施設で進む情報の伝え方の変化

映像と音で伝える院内の情報提供

医療施設における情報提供の手段は、これまで紙媒体の掲示板やポスターが主流でした。しかし、近年では来院者のニーズや利便性を重視し、映像と音を活用したデジタルサイネージの導入が進んでいます。特に多くの患者が訪れる病院やクリニックにおいて、待合室や受付周辺の情報環境が大きく変化しています。

デジタルサイネージは、動画や音声を活用してリアルタイムに情報を配信できる点が特徴です。医療機関ではこれにより、診療科の案内、検診スケジュール、健康啓発情報などを視覚と聴覚の両方から伝えることが可能になり、文字だけの掲示よりも高い伝達力が実現されています。

来院者の行動に合わせた配信内容の設計も重要です。例えば午前中は高齢者の定期受診が多い時間帯であるため、生活習慣病や予防接種に関する情報が求められます。一方で夕方は仕事帰りのビジネスパーソンが多くなるため、診療時間の延長やオンライン診療に関する情報を案内することで利便性を高められます。

また、病院内では複数の場所に異なる役割のモニターが設置されているケースが一般的です。以下の表は、院内の設置場所ごとの情報配信の例をまとめたものです。

表　医療施設におけるデジタルサイネージの設置と活用例

設置場所	配信する内容の例	特徴
受付前	診療科案内、診療時間、保険証提示の案内	初来院者向けの基本情報を中心に掲載
待合室	健康情報、予防接種案内、検診スケジュール	患者の興味を惹き、啓発につなげる内容
診察室入口付近	呼出番号、順番案内、担当医の紹介	待機中の患者への案内と安心感の提供
検査室前	検査の流れや注意事項、リスク説明	正確な情報で不安軽減、ミスの予防
処方箋窓口	薬剤に関する注意事項、服薬管理のポイント	安全な服薬のための注意喚起

このように、情報提供の内容は画面の設置場所や時間帯、来院者の属性によってカスタマイズされ、より個別化された対応が可能です。さらに、BGMや音声ナレーションを加えることで、耳からも情報を補強することができ、視覚に頼れない人にも配慮された設計となっています。

紙媒体では難しかった「情報の鮮度維持」も、ネットワーク型のサイネージによって自動更新されることで常に最新情報を保てるようになっています。特に新型感染症への対応や緊急時のアナウンスにおいて、その即時性は大きなメリットと言えるでしょう。

今後はAIによる来院者分析をもとにした配信内容の最適化も進み、より高精度なパーソナライズド情報提供が期待されています。情報の正確性と視認性、そして伝わりやすさを兼ね備えたデジタルサイネージは、医療現場のコミュニケーションを根本から変えつつあるのです。

高齢者や子どもにも見やすい画面設計

医療施設には幅広い年齢層の来院者が訪れますが、特に高齢者や小さな子どもにとっては、従来の掲示や案内表示が見づらい、理解しにくいという課題がありました。こうした課題を解決するために、デジタルサイネージは誰もが見やすく理解しやすいデザインへと進化しています。

まず、視認性を高める基本として、大きな文字サイズと高コントラストの配色が採用されます。背景と文字色の組み合わせは、白地に黒文字、青地に白文字など、視認性の高い組み合わせが選ばれます。特に加齢により視力が低下した高齢者には、フォントサイズを20pt以上に保つことが推奨されており、これにより読み取りやすさが大きく向上します。

加えて、画面の表示位置にも配慮が求められます。目線の高さに合わせてモニターを設置し、立っている状態でも座っている状態でも容易に閲覧できるようにすることで、来院者に対する負担を軽減します。また、画面の角度や反射を抑えるディスプレイ仕様も、高品質な体験に欠かせない要素です。

年齢別の設計ポイントを以下にまとめます。

表　年齢層に配慮したデジタルサイネージ設計のポイント

対象年齢層	設計の工夫例
高齢者	大きな文字サイズ、高コントラスト、スローモーション動画
未就学児（子ども）	イラストやキャラクターを用いた図解アニメーション
小学生	音声ナレーション付きのやさしい説明動画

高齢者向けには、情報のスピードにも注意が必要です。動画の切り替えが早すぎると内容を把握しきれないため、表示時間を長く取り、ゆっくりとした動きで伝えることが重要です。加えて、音声案内を組み合わせることで、聴覚からの補足も行えるようにします。

一方、子どもに向けた情報は、文字や文章だけではなく、イラストやアニメーションで視覚的に理解を助ける工夫が求められます。歯科医院や小児科などでは、キャラクターを使ったサイネージが有効に機能しており、子どもの不安感の軽減にも役立っています。

また、操作や設定は専門的な知識を必要とせず、クラウド上の管理システムで誰でも直感的に運用できるようになっているため、現場のスタッフにも優しい設計となっています。

このように、医療施設におけるデジタルサイネージは、単なる案内媒体ではなく、来院者一人ひとりに配慮したユニバーサルデザインの情報伝達ツールとして進化しています。情報格差をなくし、すべての来院者に安心とわかりやすさを届ける存在として、今後さらにその重要性を増していくでしょう。

表示機器の配置で変わる見え方

待合スペースでの利用と向き不向き

病院における待合スペースは、患者が最も長く過ごす場所のひとつです。この空間に設置されるデジタルサイネージの役割は、単なる案内にとどまらず、患者の不安を軽減し、情報をスムーズに届ける「第二のスタッフ」ともいえる存在です。しかしながら、その効果は「どこに、どのような画面を、何を映すか」によって大きく左右されます。

まず注目したいのは、画面の視認性です。待合スペースでは視線の高さが座位であるため、壁面上部にディスプレイを配置してしまうと視認性が低下し、情報が届きづらくなります。視線と平行に配置することが基本であり、また、斜めに設置されたディスプレイでは角度によって映像が見えにくくなることもあります。このため「視認角度」を考慮した設計が求められます。

次に、表示されるコンテンツの種類と切り替え頻度についてです。例えば医療機関からの案内や注意事項、健康情報、待ち時間の案内、さらにはリラックス効果を意識した自然風景などを流すことが考えられます。ただし、文字情報ばかりを多用してしまうと高齢者や視力に不安のある方には読みにくく、逆に動画中心の構成にすると情報が流れてしまい読みきれないケースもあります。

以下に、待合スペースでの設置の可否や推奨事項をまとめた表を示します

設置位置例	推奨度	理由
正面壁（座位と同じ高さ）	高い	視線の高さに合致し、全体に情報が届きやすい
天井付近の高所	低い	視線を上げないと見えず、高齢者には負担が大きい
壁の隅・斜め配置	中程度	座席配置次第で死角が生まれやすく、設置には空間構成の工夫が必要
診察室側の通路付近	高い	呼び出し情報や診察の進捗状況と連携しやすく、視認率も高い
座席間の間仕切り部	中程度	距離が近すぎると映像が強調されすぎる可能性あり。音量や明るさの工夫が必要

また、患者属性による工夫も重要です。小児科や産婦人科などではイラスト調や柔らかいトーンの動画コンテンツが有効であり、反対に高齢者が多い内科などではコントラストが高く、文字が大きめの情報構成が適しています。施設の利用者属性に応じた画面演出が、情報の受け取りやすさを大きく左右します。

加えて、表示機器のサイズ選定も効果に影響を与える要素です。20〜30インチ程度のディスプレイでは、距離があると判読が難しいケースがあるため、待合スペース全体をカバーするには40インチ以上のモニターが望ましくなります。複数台を設置する場合も、画面同士が干渉しないよう配置バランスを整えることが重要です。

最後に、院内サイネージと呼び出しシステムの連携にも触れておく必要があります。番号呼び出しや待ち時間表示とデジタルサイネージが連携することで、受付スタッフの業務軽減だけでなく、患者の不安軽減にもつながります。近年ではクラウド管理型のネットワーク型サイネージが普及しており、各画面への配信内容をタイムリーに更新できる点も注目されています。

受付・廊下など場所ごとの表示方法の違い

病院の中で、待合室以外にも情報発信が求められる重要な場所があります。それが受付カウンターや診療室へとつながる廊下です。これらのエリアでは、待合スペースとは異なる役割や動線に合わせた表示設計が求められます。

受付は来院者が最初に接する場所であり、第一印象を決める重要なポイントです。ここでのサイネージは、初診受付の流れ、保険証の提示案内、問診票記入の手順など、手続きに関する具体的かつ簡潔な情報を表示することが重要です。また、受付に並ぶ人が混雑している場合も想定し、表示内容は1〜2分程度で繰り返されるループ形式が望ましいです。

次に廊下での表示です。廊下は患者が移動する動線上にあるため、止まって見るというよりも、歩きながら視認できるように設計されるべきです。短く、強調されたメッセージを大きな文字で表示し、視認性の高いカラーリングを使用することが推奨されます。アイキャッチ効果を高めるためにアニメーションや静止画を適度に交互で活用するのも効果的です。

以下は、受付と廊下それぞれに適した表示条件を整理した比較表です。

受付と廊下でのサイネージ表示の違い

表示場所	表示目的	推奨内容の例	推奨仕様
受付	手続き案内、混雑緩和、来院者対応	保険証提示方法、初診案内、番号呼出	音声＋字幕、60秒ループ
廊下	誘導、注意喚起、簡易情報の伝達	「診察室は右へ」「消毒をお願いします」	静止画中心、大きな文字と色

設置する画面の数や向きも、通行人の流れに応じて調整する必要があります。特に廊下は、交差点や分岐点の手前に設置することで、誘導効果を最大限に高められます。

受付と廊下は、同じ医療施設内であっても求められる情報の質と提示の仕方がまったく異なるため、汎用的なサイネージ運用では対応しきれません。施設ごとの特性や患者層を的確に捉えた表示戦略を採用することが、利用満足度の向上とスムーズな院内運営に繋がります。

まとめ

病院やクリニックにおける情報伝達の質は、患者の安心感と医療サービスの質そのものに直結します。従来の紙による掲示では伝わりきらなかった案内や注意事項も、デジタルサイネージを活用することで視認性が格段に向上し、理解の促進にもつながります。とくに待合室や受付など患者との接点が多い場面では、適切なコンテンツ配信が来院者の不安を和らげ、円滑な診療体制の維持にも貢献しています。

導入に際しては、院内の設置場所やディスプレイのサイズ、表示する番組や動画の種類など、細やかな検討が必要です。しかし、クラウド型の運用システムを導入すれば、複数拠点への一括配信や、リアルタイムでの情報更新も可能となり、業務負担を抑えつつ運用の自由度を高めることができます。また、定期的な更新作業の負担を軽減する工夫や、設置後の継続的な見直しにより、無駄のない維持管理が実現される点も評価されています。

実際に多くの医療機関が、来院者との情報格差を埋めるための手段としてこの仕組みを導入し、スタッフの説明負担軽減やクレーム予防といった効果を得ています。何を、どこで、どのように伝えるか。その最適解として、デジタルサイネージの活用は今、医療現場の現実的な選択肢として注目されています。

情報が正しく、効果的に伝わるだけで、患者の信頼度は大きく変わります。導入を後回しにすることで、日々の業務の中で繰り返される説明や確認作業、伝わらなかったことによる混乱が積み重なっていく可能性も見過ごせません。病院の情報発信力を見直すなら、今こそデジタルサイネージの導入と活用について具体的に検討を始めるタイミングです。

よくある質問

Q.デジタルサイネージの導入にはどのくらいの初期費用がかかりますか？
A.導入時に必要な費用は、設置場所の環境や使用するディスプレイのインチ数、放映するコンテンツの種類によって異なります。一般的にはハードウェアの購入費用、設置工事費、システム初期設定費などが必要になります。例えば、院内の案内や診療時間の表示だけであれば比較的シンプルな構成で済むため、コストを抑えた設置が可能です。

Q.コンテンツの更新は頻繁に必要ですか？管理の負担が心配です
A.配信システムには遠隔管理機能が搭載されており、管理者は専用のクラウド型システムから簡単に画面内容を更新できます。待合室や受付など場所ごとに表示内容を切り替えることも可能で、複数の医療機関を一括で管理することもできます。更新作業の手間を減らすために、月単位で自動切替が設定されているテンプレートを活用する医院も増えています。

Q.高齢者や視力の弱い患者にも見やすい仕様になっていますか？
A.医療施設向けのデジタルサイネージは、視認性を考慮して高輝度ディスプレイや大きな文字フォントを採用しており、高齢者や子どもにも配慮した画面設計が標準となっています。また、音声案内を併用することで、視覚に頼らない情報提供も実現しており、より多くの患者にとってストレスの少ない案内が可能になっています。

Q.導入後にかかる運用費用やメンテナンスコストはどれくらいですか？
A.運用にかかる費用は、配信システムの月額使用料やトラブル時の保守対応などが含まれます。たとえば、リコーやアイアンドシーなど大手のサービスでは、年間保守契約やトラブル対応込みのパッケージプランも用意されており、安心して導入を継続できます。定期的なコンテンツ見直しを行うことで、情報発信の鮮度を維持しながら効率的な運用が可能です。

会社概要

会社名・・・医科・歯科専門HP制作会社｜Medicalgrits
所在地・・・〒550-0013 大阪府大阪市西区新町1-3-12 四ツ橋セントラルビル9F
電話番号・・・06-4393-8493